新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

環境はケアである


挨拶や言葉遣い、相手を思うことも「環境」の一部

介護に限らず環境は人の有り様を左右するものです。言葉遣い、挨拶、装飾をすること、相手を思うことも環境の一部だと思います。在宅介護の場や介護施設の現場の環境は、まだまだ考慮しないといけない事が多々ありますが、まずは環境が与える効果を知る事から考えてもらえたらと思います。
ある環境を見直すと、認知症のある利用者さんが自ら手伝いをしてくれるようになった。
ある環境を見直すと、何にもしなかった方が、ニコッと挨拶をしてくれるようになった。
ある環境を見直すと、働く職員の表情や言動が明るく前向きになっていった。…などなど、特に大がかりな研修をする事が無くとも、お金をかけずとも、環境を考える事はいつでも誰でも簡単に出来るのです。実施した事は部分的ではあっても、効果はキチンと見えてきます。だから環境を考える事は面白いのだと思います。
例えば、利用者さんの「歩けるかも!」という意欲を引き出す方法として、 見やすく、理解しやすくを意識してテーブルやいすの位置を考えます(白いテーブルが並んでいる写真)。 一見、殺伐としていますがテーブルだけの並びで言えば、この方が間隔の理解もしやすく、適度な位置にものがあり手が届くという安心感を感じるのです。 また、本当にくつろぐためには「視線を感じない場所」も必要です(写真①)。ただし、まったく見えない状態ではお互いに不安なケースもあるため、視線は遮られているけど存在は分かる、という バランスを考慮した配置です。使い方によってカーテンの開け閉めや、すだれの上下も可能なので、その時その方にあったフロアーを構成する 事が簡単にできます。

①視線は遮られているが、存在は感じられるレイアウト。
①視線は遮られているが、存在は感じられるレイアウト。
②テーブルやいすの間隔や位置を適度な距離感に調整。
②テーブルやいすの間隔や位置を適度な距離感に調整。

利用者の思いに寄り添い、常に考え、常に形にする

介護の現場で働く皆さんは、様々な研修を受けて、現場で学び、知識を得て、技術を身につけて、毎日の業務に励んでおられると思います。その自身の武器を「環境を考える」という事に、少しの時間だけ使って頂くだけで、スタッフ同士の間には役割が生まれ、お互いにモチベーションが上がり、その結果、共に過ごす環境は改善されていきます。
施設という非日常的な環境にいる利用者さんは、家という日常的な環境との差に愕然とされ、時には絶望に近いくらいのダメージを一度は受けている方がほとんどです。そんな方々がいる場所だからこそ、そこで働くスタッフは気持ちに寄り添い、時には一緒に泣いて笑って、苦楽を共にする事が必要だと思います。まずは、その方の思いを理解する努力し、常に考え、常に形にしていくという「常考常形」の意義をもって実践を繰り返す事が大切です。この取り組みこそが環境を考えるための第一歩です。
「まずはやってみる!」から始めてみませんか?介護の現場で働く皆さんには、希望の種を明るい未来の花として開花させるために、環境づくりに取り組んでもらえたらと思います。

一列型配席は動きを遮り空間を狭くさせて、コミュニティーを限定させてしまう。
一列型配席は動きを遮り空間を狭くさせて、コミュニティーを限定させてしまう。
縁側の段差解消に畳を入れフラットに。窓側席を作り出し、中央に動線を。空間に余裕を持たせる。
縁側の段差解消に畳を入れフラットに。窓側席を作り出し、中央に動線を。空間に余裕を持たせる。

プロフィール|Profile

介護環境アドバイザー 山下総司

1970年7月22日生まれ。奈良県出身。介護施設環境改善のエキスパート。現在医療法人大誠会グループ環境ユニットリーダー。全国の施設の現場に入り職員、利用者、施設、地域にそれぞれ理想の種を蒔き、希望の華が咲かせる事が仕事す! 皆さんと考え皆さんと共に喜怒哀楽を感じながら日々頑張っています。


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