「今日は何時に帰れるの?息子が帰ってくる
からご飯を作らないとね…」
不安げな顔で呟く利用者さん。
スタッフはしばらくして答えます。
「ちょっと待っててね……」
事務所へ行き、帰ってくるとこんな風に。
「○○さんは今日ね、息子さんお仕事で
帰れないからお泊まりになってますよ」
と、事実をキチンとお伝えしている。
「あ~そうなの。じゃあよろしくお願いします」
と、会釈をしてまた席に着く。
しばらくして、、、
「今日は何時に帰れるの?
息子が帰ってくるからご飯を作らないとね…」
とスタッフへ聞いてくる。
スタッフは答えます。
「○○さん、さっきも言ったけど息子さん、
お仕事で今日は帰ってこれないから、
ここに泊まっていくんですよ、、、
大丈夫ですから」
と答えます。
この続きがどうなったか?はご想像に
お任せしますが、果たしてこれは傾聴に
なるのですか?
もしくは寄り添いになるのでしょうか?
この方は認知症があり、既にご自宅に息子
さんはいなく、遠方で家族で住まわれてます。
そしてこの方が、今日は泊まり、であるのも
事実なのでスタッフが嘘を言ってる訳では
ありません。
ただ考えてほしいのです。
利用者さんが何故スタッフに聞くのか?
聞かれた時に利用者さんが
何を考えているのか?
理由を述べて、丁寧に事実を述べる。
これが悪いとは言いませんが認知症の症状が
ある以上、この対応では利用者さんは
なかなか落ち着かないケースが多いのです。
スタッフがこの利用者さんの立場に
例えたらこうなります。
仕事で嫌なことがあった。
夜になってもイライラが収まらずに友人に
電話をします。
ここまでが利用者さんの最初の言葉の状態。
帰らないと、、、という場面です。
で、続きを利用者さん対応ですると、
電話をされた友人はこんな風に言います。
→それは相手が悪いわね。だけど私に
愚痴っても何にも問題解決にならない
から、明日キチンと話したらいいわ。
となります。
こんなのをいきなり友人に言われてどう
思いますか?果たして納得いくでしょうか?
きっとこんな対応を期待してませんか?
→それは大変やったね。気持ちわかるわ~
私もね、会社で色々あって腹もたつけど
普段あなたに愚痴聞いてもらって
スッキリするから助かるのよ。
明日から大変だろうけどまた何かあれば
愚痴くらい聞くからいつでも言ってね!
みたいなことで、その時のイライラが
少しでも解消したらホッとするわけです。
利用者さんも同じなんだと思うのです。
帰れないこと、ひょっとしたら分かっている
かも知れません。分かっているんだけど、
誰かにちょっとだけでも聞いてもらえたら
しばらくは同じようにホッとして
落ち着かれるかも知れないのです。
そしてこのように、
少しだけでも利用者さんの今の思いを
聴いていく事が傾聴であり利用者さんの
気持ちに寄り添うと言えるのだと思います。
放浪後の一言:寄り添うのって大変です