新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

帰宅欲求に対しての当たり前な考察


『家に帰る!』という訴えを帰宅欲求といい
徘徊や不穏、周辺症状として見がちだが…。

 

ところで、あなたは家に帰りたくないですか?
夜になると、家族の待つ家に帰りませんか?

 

そう。そうなんだ。

 

家に帰ろうって思う気持ちは
誰にでもあること。当然なのだ。

 

では逆に。

『プチ家出』って言葉が一昔前に流行ったが
そういった若者がどうして家に帰りたくないのか?

 

僕はこう考察する。

家に帰ってもつまらないから。
帰る必要がないって思うから。
必要とされてないって思うから。
外で遊んでたほうが楽しいから。

 

ここまできたら介護の話に戻して。

認知症のお年寄りが家に帰りたいと言う気持ちって?
この施設にはいたくないって考えてしまう気持ちって?

 

考えてみれば『家に帰りたくない!』と言う人の
ほうが色々な意味で問題があるのではないか。
家庭環境大丈夫なのか?って逆に心配になる。

 

もちろん、施設が家(生活の場)と思っている人に対し
あえて『ここは家じゃないですよ』と言うつもりはない。

それは逆に、家(生活の場)と思って生活してる人にとって、
その居場所を否定してしまうことになりかねないから。

 

もうひとつ加えて言ってみる。

 

家に帰る!って四六時中言ってる人はいるのか?
たまに落ち着いて座っていることがあるではないか。
そこで、何故落ち着いてるかを考えていく必要がある。

 

おそらくここが家とは思わなくとも、居心地のよい場所、
必要とされている、生活の場と思っているのではないか。

 

これに落ち着くという表現は間違ってるかもしれない。
強いていうなら、折り合いをつけていると言うべきか。

 

大事なことは家を忘れさせることではない。
そういった意味の落ち着きなんて必要ない。
帰宅要求を訴える人に対して大切なことは
施設を『家』『家族』にすることではないのだ。

 

大事なのは不本意ながらも施設を利用することに
なったお年寄りの心に寄り添っていくことではないか。

 

その人の帰りたい思いを理解し、ちゃんと受け止めつつ
ここに居てもいいのかって思える環境を作っていくこと。
『ここなら安心』と折り合いがつくような支援をすること。

 

帰宅欲求を問題行動や手がかかることと捉え
家を、そして家族を忘れさせようとするような、
言わば『ボケさせる介護』をしてはいけない。

 

介護短歌

帰りたい
帰らせてくれ
帰らなきゃ
手間と思わず
受容の態度で

家族が来て、落ち着かなくなる方はたくさんいます。
家族を思い出したんですもん、当然のことですよね。

 

だからといって、家に帰りたいと思うのは当然!
って思い、ウロウロしている年寄りに何もせず
そのままに放置しておくこともどうかと思います。

 

不安を募らせ、居場所が分からない状態をほっておく。
それもまた『ボケさせる介護』に他ならないのだから。


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