燕弥彦西蒲食支援ネットワークの高井です。
毎月第3木曜日はある介護施設で食事場面評価と施設職員さんとの会議を行っています。先日の投稿で書きました経口維持加算の取組みです。こちらの施設では5年間その取り組みを続けており、そのなかである入所者さんのエピソードをご紹介します。
食事中のむせ込みがひどく、施設で提供する食形態もどんどん下がり、現在はミキサー食を摂取。しかしミキサー食でもむせ込みがひどいという相談でした。患者さんのご家族、施設職員同席の下で嚥下内視鏡検査を実施。その結果は意外なもので、ミキサー食どころか、軟菜食まで誤嚥することなく摂取できました。
検査上は軟菜食まで摂取可能、でも実際の食事ではミキサー食でもむせ込む場面が多いのです。
次の月にもう一度食事場面を拝見しましたところ、やはり提供されたミキサー食の一口目で激しくむせ込みました。検査ではむせないが実際の食事ではむせる。一体何が原因なのか・・・
この方は自力摂取しているので、食事介助の方法は無関係。食べている様子をじっくりと観察しながら検査の様子を思い出す。
もしかして、足の位置!?・・・
食堂ではテーブルのフレームに足をちょこんと乗せているだけ、その両足をしっかり床にあててみると、あれほどむせ込んでいたのにピタリと止まりました。その後はむせることなく摂取できています。検査で食べる能力は軟菜食まで確認できました。順調にならば徐々に食形態も上がることでしょう。
なぜ能力に応じた食形態を提供することが重要なのでしょうか。できるだけかたちのある食材、歯ごたえのある食材で食べる楽しみを損なわない。という点以外にも、「食形態が下がるほど、重量に対する栄養価が低くなる」という点があります。
ミキサー食などは加水量が多くなり、常食に比べ重量に対しての栄養価が低くなります。常食と同程度の栄養価を摂取するにはかなりの量を食べる必要があります。
むせなどが原因で日常的にミキサー食を残すということは低栄養になりやすく、低栄養になると活気がなくなり、全身の筋肉量の低下に伴いさらに口腔・嚥下機能は低下するという悪循環に陥ります。また、免疫力や体力も低下し、誤嚥性肺炎の高リスクとなります。こちらの施設の取組みは安全に効率的に栄養を摂取するための取組みでもあります。
「むせる」というと、どうしても口やのどに注意が行ってしまいますが、両足を床につけて体幹を安定させるという基本を再確認したケースでした。