脊髄小脳変性症を患ったAさんとのお話です。
もう数年前の出来事です。
私が通所リハでAさんの担当になり、歩行や機能訓練を行っていました。でも病気は進行していき、Aさんにとっての生きがいも失われ「もう生きていても意味がない」と話されていました。
そこで、ある日Aさんに「やりたいこと、大切にしたいこと」は何か聞いたところ、「またカラオケで天童よしみを歌いたい」と。
その後「カラオケで天童よしみの珍島物語を最後まで歌えるようになる」を目標にリハビリを行い、家族や他職種からも協力して頂きました。
結果、みんなの前で珍島物語を歌うことができ、Aさんはこう語りました。
「小山さん、私でもできることが見つかったの。私は歌をうたって皆を喜ばせることができるの」と。
その後Aさんは難病デイに通うことになったのですが、私との最後のリハビリ中に、天童よしみの珍島物語を大きな声で歌ってくれたのを今でもよく覚えています。
そんなAさんと別れて4年…私の祖母が入所していた特養に行った時の出来事です。
その特養にAさんもいらっしゃいました。でも、もう歩くことも、立つこともできない…寝たきりのご様子でした…
その時、館内に音楽が流れていました。
Aさんは、わずかな小さい声でしたが、一生懸命その音楽に合わせて歌っていました。
そこに寄り添う、若い介護士さん。
音楽が終わると、Aさんの耳元でこう話しかけました・・・
「Aさん、歌ってくれてありがとう」
その介護士さんが、どのような思いで、その言葉を言ったのかはわかりません。もしかしたら、業務中のなにげない一言だったのかもしれません。でもその言葉が、どれだけ深く、温かく、Aさんの心に染み入ったでしょうか・・・
忘れられない、ありがとうの言葉。
もしAさんに伝えることができるなら、私も「ありがとう」と伝えたい。
今はもう叶いませんが、ありがとうの活動を通して、この思いを伝えていきたいですね。