新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
関節の構造

寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑪ 関節拘縮の発生2:「拘縮」とは?医学的な定義から


さて、やっと「拘縮」のテーマに入ります。今回はほぼ、基礎医学的なお話しになりますが、今後の「実際のケア」につなげていく上でぜひとも必要な知識になりますから、よろしければお付き合いください。

拘縮というのは、関節の動く範囲が狭くなっている状態のことを言いますね。では例えば、四肢の骨折受傷直後で動かすと少しでも痛いのでまったく関節も動かせない状態、というのは、「拘縮」でしょうか?これはなかなかお答えが難しいです。それは、「拘縮とは何か?定義」の問題だからです。

拘縮の分類、つまり拘縮の起こる原因の分類としては、昔から「Hoffaの分類」というものが一番有名でした。以下のようなものです。

拘縮の分類 Hoffa分類

① 関 節 性 滑膜・関節包・靭帯などの短縮、癒着、瘢痕化による可動域制限。
② 皮 膚 性 関節周囲の皮膚の柔軟伸張性の喪失による可動域制限。
③ 結合織性 皮下軟部組織・腱などの短縮、癒着、瘢痕化による可動域制限。
④ 筋  性 筋の短縮や緊張亢進による可動域制限。
⑤ 神 経 性 神経病による痙性麻痺や痛みに対する反射性の筋緊張による可動域制限。

ところが、現在の整形外科学における拘縮の医学的な定義は、「関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した可動域制限」と整理されており、これは『筋収縮が惹起されていないことが前提』となっています。

関節の構造

ですから、Hoffa分類のうち現在の医学的な拘縮の定義に当てはまるのは、(私の解釈では)③結合織性 と、②皮膚性 も入れても良いかな?となります。あるいは、④筋性のうち、「筋緊張亢進状態」による可動域制限は拘縮には入らないが、実際に筋が短縮してしまって伸張性が失われた状態になった時点で拘縮に該当するか?となります。

でもまぁ、医学的にどうか?は、私たち生活支援者にとっては大した問題ではありません。ただ、拘縮(あるいは拘縮様状態)というのは、このようにいろいろな原因や状態があるということを理解し、さらにそれらが「どういうふうに進行していくか?生活支援の業務に絡んでいくのか?」を理解することが大切だと思っています。

ちなみに、寝たきり老人さんですでに実際に拘縮(あるいは拘縮様状態)が発生してしまっている方の関節に、Hoffa分類のうちのどれか一つだけが起きているわけではありません。複数の状態、原因が重なっている可能性が大きいです。ということは、Hoffa原因分類①~⑤の中で、「発生~進行順序」がある、ということにもなりますし、Hoffa原因分類①~⑤の中で、回復可能なもの/回復が極めて難しいもの/回復しないもの、と分けて考えることも必要になってきます。


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