新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
終末期リハビリテーション~リハビリテーション医療と福祉との接点を求めて~大田仁史:荘道社:2002 より

寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑩ 関節拘縮の発生1世界的には当たり前ではないです:「拘縮」の総論


 今回は「寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑩」です。⑥~⑨で、寝たきり老人さんの身体中の筋肉が硬くこわばり、筋緊張亢進していく理由を整理しました。②~⑤では呼吸が抑制されていき頭蓋骨が「顎だし姿勢」にそっくり返っていく理由がまとめてあります。「呼吸の抑制」「筋緊張の亢進」に続いてのテーマは、『拘縮の発生』です。


「寝たきり老人さんの手足は拘縮していく」当たり前だと思っていませんか?ところがどっこい、このブログタイトルにもあるように「手足の関節が拘縮した寝たきり老人の姿」というのは、日本国独特の現象です。少なくとも欧米には少ない、あと、経済力をつけてきているアジアの各国には、ほんの少しでも最近は日本と同じような姿の寝たきり老人さんがいらっしゃるようです。

 では、なぜ欧米では少なくて日本では普通に見られるのか?その理由を整理しておきましょう。

終末期リハビリテーション~リハビリテーション医療と福祉との接点を求めて~大田仁史:荘道社:2002 より

終末期リハビリテーション~リハビリテーション医療と福祉との接点を求めて~
大田仁史:荘道社:2002 より

理由の1:そもそも欧米各国には、「寝たきり老人」がいない
「寝たきり老人」という言葉自体が、実は極めて不明確なものです。寝て過ごしていれば「寝たきり老人」です(^-^; 昔の福祉の笑い話に、冬にばあちゃんが寝たきりになった、というから春先に家庭訪問したら「春になって畑に草が生え出したから、草とりに行ってるよ」と家族に言われた、てのがあります。
「寝たきり老人」を医学的に定義すると、『失外套症候群(しつがいとうしょうこうぐん、Apallic syndrome)』が間違いなかな?と思います。大脳皮質の機能が失われている状態で、脳幹部の機能まで完全に失われている「脳死」と違って、呼吸・心臓中枢は機能していますし、(胃瘻すれば)普通に消化吸収排泄できます。睡眠と覚醒の調節も保たれているとされていますが、自発的な行動は一切ありません。
欧米では、失外套症候群のままで長期間を過ごす、ということはないようです。むしろそのような状態で生かし続けることは「虐待」である、という認識が強いようです。それどころか、「自分の口から食べられなくなったら、あとは自然に衰弱して死んでいって当然」という価値観の国もあると聞きます。
そのような状況では、そもそも「手足が拘縮した寝たきり老人」がいるはずがありません。
日本ではどうでしょう?どうなっていくでしょうね?あなた自身は、(脳死ではなく)失外套症候群の状態で生かされ続けたい、と思いますか?あなたの家族や大切な人が失外套症候群の状態に陥ったらどうしますか?

理由の2:
では、欧米でも日本と同じように「失外套症候群」の状態で生かし続けるような医療・介護になれば、欧米でも「手足が拘縮した寝たきり老人」が当たり前になるのでしょうか?日本の寝たきり老人の手足が拘縮しているのは仕方のないこと、なのでしょうか?私は、そうは思いません。そもそもこれがこのブログを書いている理由なのですが、(失外套症候群レベルの重度な)寝たきり老人であっても、カチカチに固まる拘縮は予防できる、と考えています。失外套症候群の方々にもきちんとしたケアを提供していけば、拘縮の発生は防げるものだと思います。
かつて日本で、1970年代のころまでは「寝たきり老人のお尻に大きな“褥瘡”が」できたら、“あと半年”くらいだね」と言われていたそうです。そんな状態になれば、遠からずなくなってしまう、と。そうではなくて、褥瘡が「看護・介護の恥」とされ、不十分なケアの結果として起きてくるものなのだ、と言われ出したのが1980年代に入ってからだと思います、それも80年代半ばくらいかな?(私自身が専門職駆け出しの頃なので、このころの雰囲気は知っているつもりです)今はどうですか?医療機関においてはきちんとした褥瘡予防対策がとられていなければ、診療報酬が減算される時代になりました。30年から40年かけて、褥瘡に対する認識や対応が変わってきたわけです。
私は、今の「寝たきり老人の手足の拘縮」に対する一般的な認識は、1970年代の褥瘡に対する認識と同じようなもの、と考えています。
それに異を唱え、「10年で日本の要介護高齢者から拘縮を無くす!」と気を吐いているのが、「こうしゅくゼロ推進協議会」さん(https://www.facebook.com/conzerojp/)であり、設立者の石橋さん(https://www.facebook.com/HirotoIshibashi)で、私自身も形だけみたいなものですがお手伝いさせてもらっています。他にも、同じような価値観の、医療・介護・福祉用具関する団体も複数あります。


 今回は「寝たきり老人の拘縮」について、むしろ社会的な面から総論的にまとめておきました。次回はもう少し具体的に拘縮の原因と対応(の原則)をまとめます。


About the author

2 thoughts on “寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑩ 関節拘縮の発生1世界的には当たり前ではないです:「拘縮」の総論”

  1. 介護職を始めたばかりです。

    ご利用者様がまさにこのような方が何人もいて、
    意識が殆どないのに、無理やり口に押し込んだり、
    吐き出せば点滴と見ていて苦しい状況です。

  2. 介護職を始めたばかりです。

    ご利用者様のなかに、拘縮して意識がなく
    寝たきりの方が何人もいます。

    無理やり口に押し込んだり、吐き出せば点滴と見ていて苦しい状況です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

こまち介護転職 無料申込みフォーム

カテゴリー