新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
重力不安

寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑦ 筋緊張の亢進2


また間が空いてしまいました。バッタラバッタラしています。

 寝たきり老人さんが全身の筋肉をこわばらせていく理由を、まずは呼吸との絡みで説明したのが前回でした。今回は地球の引力の関係から、二点。


 一点目、「臥位においてもベッド面側の筋が緊張し続ける」ということ。これは田中義行氏が拘縮予防の考え方の基本として、メジャーにしてくれました。仰臥位・側臥位それぞれにおいて、ベッド面側の筋肉が緊張し続け、天井側の筋肉は緩みます。セミナーにおいては、側臥位において腰部の脊柱起立筋でそのことを確認してもらっています。そして、簡単な支持~ポジショニング処置でその緊張がほどけることも確認できます。
私たち自身の身体であれば、「休日の朝に二度寝してお昼まで布団の中で寝続けると、腰が痛くなる = 寝腰」という現象が、これに該当すると考えられます。12時間かそれ以上も仰臥位をとり続けると、ベッド面側の筋緊張が亢進して最後には痛みとして感じられてくるわけです。私たちであれば、いい加減腰も痛いしそろそろ起きるかぁ、とゴソゴソしだして動き出せば、寝腰の痛みはすぐに消えます。でも、寝たきりさんは一日のほとんどを臥位で過ごし、それが1ヶ月・1年と続くわけです。私たちであれば12時間でちょっとした痛みとして感じられる筋緊張が、そういう長期においては本当に身体変形の原因となっていく、という事です。そして、身体を変形させようとする引力に対して負けまいと緊張する筋肉も、ちょうどよい支えを加えてあげればほどけますよ、だから臥位ポジショニングが大切です、ってことです。

 二点目、今度は逆に天井側、表側の筋肉が緊張していく要素が別にあります。それを私は「重力不安性からの屈筋群亢進」と呼んでいます。高齢者さん、それも寝たきりさんは、身体の節々がベッド面から浮いていることが多いです。少しだけ、浮いているんですね。そのまま少しだけ浮かせ続けておくのは辛いです。中には上記一点目の作用が強く出て、ベッドとの間に隙間がないくらいに身体がまっ平らになっていく方もいらっしゃいますが、それが全てではありません。少し浮いたままでいるよりも、キュウッ!と小さく丸まってしまった方が、身体としては安定します。でも、全身的に丸まったままで仰臥位でいるわけにはいかないので、全身的に丸まった上でパタンと横に倒れます。「丸まって側臥位に固まっている」という事になります。これが二点目ですね。

重力不安

重力不安による屈筋群亢進
1:重い身体を少しだけ浮かせておくのは、辛いです。(写真の場合は※上腕二頭筋)
2:それよりも、「伸ばしきる」方が、筋肉は頑張らなくてもよくなります。
3:あるいは、重い末梢をしっかり持ち上げてしまった方が、かえって力は抜けます。
4:でもそうやって丸まり持ち上がった身体はパタンと横に倒れます。丸まりながら側臥位に横たわる拘縮の姿です。
*本来は1:の場面で浮いた手背を下からしっかり支えてあげれば、リラックスできますね。


 

 一点目と二点目で、臥位において「表も裏も」筋緊張が高まる、という事になります。それをほどくのが、ともに「身体の節々を支えるポジショニング」なんですね。

 一言で結論、少し曲がったり変形してきているお年寄りの身体は、まっ平らなベッド面上に投げ出されただけではくつろげない!て、ことです。


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