新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
67-1

寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑥ 筋緊張の亢進1


前回までで、「不良姿勢のままで放置されると抑制されていく呼吸運動と、それに伴って起きてくる頭頚部の姿勢の崩れ」について4回お話ししました。これは、変な姿勢のままで放置すると起きてくる健康被害7項目、

a:呼吸への悪影響、安楽な呼吸運動の抑制
b:全身的な筋緊張の亢進
c:拘縮の発生(a,b,による)
d:褥瘡の発生(a,b,とg,末梢循環の減少による)
e:咀嚼嚥下機能の低下(a,b,c,による)
f:連続的な不快感からの精神的緊張~不穏状態
g:その他、便秘/残尿、唾液の粘調化による口腔内の不潔などから、さらに尿路感染症や誤嚥性肺炎の発生。交感神経の過緊張状態。

のうちの、a:の部分を4回でお話しした、ということです。続いて「b:全身的な筋緊張の亢進」について、まとめていきます。やはり、4回くらいかかりそうな気がします(^^;


 変な姿勢で放置されている方は、良い姿勢で過ごしている方に比べて全身の筋肉が硬くこわばっていることが多いです。体のこわばりは、疾患としての症状としても現れますし、イラストのように精神的な緊張に伴っても起こります。ところが寝たきり老人さんの場合、変な姿勢のままでいることでこわばっているのです。それがそのまま「c:身体変形・関節拘縮」の原因となっていきます。ではなぜ、変な姿勢のままでは筋肉を柔らかく過ごすことができないのでしょうか?(これも変な表現ですが)寝たきり老人さんの身体に起きていること①総論、でも述べましたが、不良姿勢~筋緊張亢進~関節拘縮は、それぞれが原因であり結果である、という面があります。その辺を分かりやすくまとめていってみますね。

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身体はいろいろな原因でこわばります

 まず今現在、私の中でまとめている「変な姿勢で過ごしている寝たきり老人さんの筋肉が硬くこわばっていく理由」を、箇条書きに表してみると、以下のようになります。

・呼吸の息苦しさ、胸式呼吸筋緊張から全身への波及
・抗重力筋の作用
・重力不安からの屈筋群亢進
・無理な姿勢を強いられることによる過伸長
・不適切な動作介助による反応(これは“姿勢”そのものではありませんが)

ぱっと見て、「あーこれは分かる!」という部分と、「これなに?」という部分があるではないでしょうか?


※一つ目:呼吸の息苦しさ、胸式呼吸筋緊張から全身への波及
まず、呼吸絡みから。前回までで「寝たきり老人さんの頭が伸展にそっくり返り、下顎が開いて後退する理由」をまとめました。胸式呼吸筋である胸鎖乳突筋の持続的な緊張や舌骨上/下筋群の引っ張りが、その理由でした。そして胸式呼吸筋は、胸鎖乳突筋だけではありません。胸郭・肋骨を引っ張り上げようとする胸式呼吸筋を列挙してみますと、

胸鎖乳突筋、斜角筋群、外肋間筋、大胸筋、小胸筋、肩甲挙筋、肋骨挙筋、広背筋、僧帽筋上部線維、、

細かく見れば、まだ他にもあげられるでしょう。ヘンな姿勢で放置され腹式呼吸が抑制された状態では、頚から肩、胸にかけてのこれらの筋肉が常時緊張し続けるわけです。また、自分たちが胸式呼吸をしている時のこと(全力疾走した直後や階段を駆け上がった直後に、膝に手をつきハァハァいってる状態)を思い出してみれば分かりますが、上記呼吸筋だけではなく上下肢も含めて全身の筋肉が強ばっています。それはそうです、「苦しい」んですから。腹式呼吸が抑制されることで緊張が高まり、さらに姿勢が崩れるのは胸鎖乳突筋と頚椎頭蓋下顎だけではなく、全身に及ぶのです。

 ですから、まずは前回までで説明した「安楽な呼吸の抑制」が、そのまま「全身的な筋緊張の亢進」につながっていきます。まずはこれが一点目。ですから、寝たきり老人さんの姿勢を整え安楽な呼吸状態を確保すると、それだけで身体中の筋肉が緩んでいく、という経験をします。でも、それだけじゃダメですよ、「筋緊張が亢進していく理由5つ」のうち、まだ1つ目でしかありません。


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