新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

記録を工夫して、利用者対応の考え方を共有する


先日、ある介護施設にお邪魔して、弊社所属講師が担当するリーダー研修を聴講させていただきました。
研修の中で、介護記録が話題になりました。

あるユニットのリーダーさんの話。
「ユニットなので、職員がそれぞれひとりで動くことが多い。ご利用者の状況把握は、申し送り(記録)が頼り。だけど、あったことだけ、その時の状況だけしか書いてないことが多くて…」とのこと。
「たとえば”Aさんが夜間不眠だった。対応に困った”という情報だけが記録され、申し送りされる」
「できれば、どのような対応をして、それが良かったのか、効果がなかったのか、とかを書いてほしい」
「状況だけ聞かされても、どう対応すれば良いかとっても困る」とのこと。
この日の講師も、
「申し送りは、聞き手がなにをすれば良いかわかるように伝えなければ意味がない」とコメントしており、ほんとそうだなあ、と思いながら、SOAPという記録方式をちょっと勉強したな…と思い出しました。
「SOAP」とは、医療看護の分野において、対象者の経過をカルテなどに記録するときの記入方法のひとつで、という順番で記録をとっていくことで、利用者の抱える問題点や、援助を展開していくプロセスが明確となり、医療介護のチームにおける情報共有もスムーズに行える、というメリットがあるそうです。

S(subjective)
利用者の主訴/主観
O(Object)
介護者の所見/客観
A(Assessment)
評価/職員がどのように考えたか/アセスメント
P(Plan)
計画/今後どのようなケアをしていくか

SOAPの枠を参考にして実際のケースにあてはめてみます。

(S)主訴:
 ・ご利用者Aさん「眠れない」
(O)所見:
 ・何度も居室からステーションに来られる。
 ・険しい表情。ここ1か月、夜間の不安・不眠な様子が度々報告されている。
(A)評価:
 ・場所や時間がわからないなど、認知症の症状もあって、とても不安な状態。
 ・安心してもらうこと、時間が許す限り傾聴する必要がある。
 ・お茶を一杯と地図を出して、「Aさんの自宅はどこですか?」と聞いた。
 ・Aさんのご自宅の場所を確認し、「ここから自宅まで車でも30分かかる。明るくなったらまた帰る時間を相談しましょう」と伝えると、安心した様子で寝てくださった。
(P)計画
 ・「まだ起きてたの?」「もう寝てください」等の否定的・指示的対応は不安を高めてしまい逆効果
 ・時間があればお茶を出して少し話を聞く。地図には興味を持っていただけた。
 ・介護職がAさんのことを良くわかっていることをさりげなく示す(ご自宅は○○村の2丁目ですよね?)
 ・入浴のない日の不眠が多いように思うので、入浴のない日の日中活動など見直しを検討する。 

本来、SOAPには色々細かいルールがあり、そのまま介護現場に導入するのはちょっと難しいかな~と思います。この事例も、ちょっとルールを守れていない部分があります。
大事なのは、所見・評価・計画を意識して書き分けること(対応の根拠)、そしてそのような対応を行った結果どうなったのか?ということを記録に残すことが情報共有のために大事なことではないかな、と考えました。
このような記録方法を、リーダークラス職員だけでも「利用者対応が難しい」とか「この情報を共有したい!」という場合に限って使ってみる、という考え方でも良いのかな、と思います。

なるべく簡潔に書くことで、経験の浅い職員に参考になるような記録になるのではないかと思いました。

介護現場でのSOAPに関する古市孝義先生の資料
https://www.jmar-llg.jp/record2020/data/record-lec1116-ref2SOAP.pdf

他、参考文献
https://job-medley.com/tips/detail/853/


About the author

斎藤 洋

新潟県在住|介護現場の人材育成支援|介護福祉士・社会福祉士・学士(心理学)・修士(社会福祉学)・日本社会事業大学大学院博士課程在学中| https://twitter.com/hiroshithenet

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