新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

手間を惜しまず


※ また『放置プレイ』の続きになります。

さて、おばあさんは果たしてリンゴを
食べることができたのでしょうか?

実はこれ、前の施設でのお話です。

リンゴを見ても、ぽか~んとしていたおばあさん。
包丁を渡そうとしたら首を振って拒否したおばあさん。

1年前はそんなもんでした。

でも次の年には。

ちゃんとリンゴむいてくれるようになりましよ。

それだけじゃなく。

食事の準備、片付け、たたみ物などなど。
ちゃんとしてくださるようになりました。

たまに回路がつながらないこともあり
つまみ食いしちゃったり、途中から
手が止まっちゃうときもありましたが(笑)

で。実はこのおばあさんったら。
その2年前には大腿骨を骨折しています。

でも、普通に歩けるようになりました。(歩行器使用ですが)

入所したばかりの頃、娘さんが面会に来ても
誰だかよく分からなかったおばあさん。

2年後には『うちの娘だよ』と紹介してくれるように。

まぁ帰った後、誰が来たか尋ねても
『誰も会いになんて来てないよ』
って答えることもありましたが(汗)

…。

皆さん、お年寄りって元気になるんですよね

僕は昔。

お年寄りはどんどん衰えていくもの。

お年寄りはどんどん呆けていくもの。

お年寄りは一人じゃ何もできないもの。

お年寄りは食事を食べられなくなるもの。

お年寄りはトイレにも行けなくなるもの。

お年寄りはオムツを当てなきゃいけないもの。

そんなイメージでお年寄りを見ていました。

てか、施設で衰えていくお年寄りを見続けるなかで
そんな悪いイメージが植えつけられていました。

でも。

それって結構な確率で、介護がそういう
方向に持っていってるだけですから。

すぐに手を出す。お年寄りのペースに合わせない。

そんな介護がお年寄りを衰えさせていますから!

お年寄りのできることをこちらが信じないで
手を出しすぎると、その人はすぐに衰えちゃいます。

だってやらなきゃ忘れますから。

お年寄りができることはご本人のペースでやって
いただかないと、自分ですることを諦めちゃいます。

やってもらえばけっこうできますから。

悪いイメージから良いイメージへ。

衰えていくお年寄りの世話をするイメージより、
お年寄りが元気になるイメージを思い描くような。

そんな介護職でありたいですね。

そっちのほうが楽しいもん(笑)

介護短歌

拭い去ろう
衰え続ける
イメージを
手を出さずして
手間を惜しまず

たとえ今は時間がかかったとしても
手間を惜しんだらもったいないです。

だって、本人ができるように
なるかもしれないんだから。

てか将来的に時間がかからなくなるかも。

イメージを良い方向に持てば、今現在
時間がかかるであろうひとつひとつの
対応が実はご自分でできるようになる
大切なきっかけ作りになっているのです。

トイレにお連れする。

排尿・排泄による不快の解消。

椅子に座っていただく。

姿勢をちゃんと正していただく。

自分の手で食べてもらう。

義歯を治してみる。

自助具を上手に使っていただく。

移乗の際は足をついてもらう。

手を伸ばして手すりにつかまってもらう。

お風呂は特浴から普通浴へ。

お風呂でも自分でできることは自分で。

ご自分で着やすい・着たい服を一緒に選ぶ。

一方でわざとボタンのある服にする。

言葉かけを丁寧に。

てか対応そのものを丁寧に。

待ってみる。

信じてみる。

お願いしてみる。

その気にさせる。

よいしょする。

などなど。

この手間は元気になるきっかけとなります。
そう考えれば、手間なんかじゃありませんから。

すぐに手を出してしまう前に、時間を惜しむ前に
きっかけ&環境を整えることを始めてみませんか?

そこさえしっかりしていけば後は放置しても
お年寄りはきっとご自分で動いてくれますよ。


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