新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

不穏が起こした奇跡


偶然か必然か、同じユニットで生活していた
古くから付き合いがあったおばあさんたちの話。

 

近藤さん(90歳)と入田さん(90歳)。(仮名です)

 

ホントに長い付き合い(50年以上!?)だったらしく
「それはそれは仲が良かった」と、近藤さんは自慢げに言う。

 

が、入田さんのほうは認知症状が強く現れてしまい…。

 

施設で再会を果たしたときはもう
近藤さんのことなんて忘れていた。

 

そんな入田さんを見て、しっかりしてる近藤さんは

「ああはなりたくない」

と、諦めムードでちょっと馬鹿にした態度をとっていた。

 

そんなある日、入田さんが夜間に大騒ぎ!

 

とはいうものの、そんなに動けるわけもなく
ベッド上で服を脱いだり、柵に足をかけたり、
布団をひんむいたり…。そして大声で叫ぶ!

 

『家に帰る~!』

(夜勤の方、ホントお疲れ様でした…)

 

日中もその不穏は収まることなく、表情も険しい。
ベッドで横になってても、そりゃもう転落する勢いでw
朝・昼食とあまり手をつけず、食器を投げつけるのだ(笑)

 

入田さんの理不尽な態度を見て
旧友の近藤さんは少しご立腹。

 

近藤さんに呆れられてしまう入田さんも可哀想だし、
入田さんの悪い部分を見ちゃう近藤さんも切ないだろうし…。

 

何よりトラブルがあったら大変だろうからと、
二人の席を引き離して生活をしてもらっていた。

 

そんなこんなで夕飯前。

『家に帰る~!』

入田さんはあいかわらず怒りモードだ(泣)

 

そこで僕はふと思った。

 

家のことを思い出して帰りたくなってんだな…。
思い出して…か。そうだ!これは使えるかも!!

 

僕はリビングでくつろぐ近藤さんの近くに
あえて不穏の入田さんを連れていった!

 

そして近藤さんの前で聞いてみる。

『入田さん、この人分かりますか!』

 

すると。

 

『近藤さんだ~~~!』

 

まさかの入田さんの発言に、近藤さんは喜びのあまり興奮状態!

 

「そうだよ、そう。近藤だよ!入田さん分かるかい!?」

 

『あぁ~分かる~』

 

そう言うと、入田さんの手が伸びる。

近藤さんも手を伸ばし、がっちり握手。

 

「あ~、よかった~!!雪が解けたら一緒にどこか出掛けようね!

 あんたも病気に負けんじゃないよ!一緒に頑張ろうね!!」

 

その言葉を聞いた入田さんは、にっこり微笑み頷いた。

 

感動の再会を果たしたばあさんず。
僕の胸に温かな気持ちが込み上げ、
思わず目頭が熱くなってしまった。

 

介護短歌

「家に帰る」
家族や友を
思い出し
案じる気持ちは
不穏にあらず

 

職員を困らせていた入田さんは
近藤さんにとってかけがえのない
友人として再び戻ってきました。

 

自分らしさを取り戻した入田さん。
そしてそれをとても喜んだ近藤さん。

 

これを不穏と言ったらバチが当たりますね。


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