新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

便ショックの対応を考える。【後編】


前回は長々とした説明となりましたが。
(たなかいごらしからぬ記事になっちゃった)
今回も長くなりますがお付き合いくださいませ。

便ショックの対応に必要な、前回お話した
①~③についての説明からいきたいと思います。

①ですが。

下剤は大きく分けて2つの種類に分類されます。

(1)便を柔らかくするタイプ

腸壁よりも浸透圧の高い成分が含まれ、水分が腸壁ではなく、
便の中の成分に引き寄せられる薬。つまり便に含まれる水分が
多くなって、便を軟らかくします。その作用は穏やかです。
(カマグ、マグラックスなど)

(2)大腸に刺激を与えるタイプ

蠕動運動を亢進させて、直接大腸に働きかけて便通に
効果を発揮する薬。効果は良いのですが、腸に刺激を
与えるので腹痛を伴うことがあります。また、連用により
効果が低減してしまうので、常用すべき薬ではありません。
(アローゼン、センノサイド、ラキソベロンなど)

(2)って常用すべき薬ではないと言いつつも、
実際には(2)を常用してる人が現実ではないでしょうか?

だって効果早いし、簡単に便が出るんですもんね。
腸管粘膜に炎症が起こる可能性があるにも関わらず。
相手が腹痛を起こしていようが関係ありませんから。

なので下剤に頼るのであれば(1)のほうがいいです。
作用が穏やかですし、連用による副作用も少ないから。
腸内環境のバランスを整える効果もありますからね。

ただし、腸壁よりも便に水分が吸収されていくので
水分を多めをとっていくことをオススメします。

まぁ水分が面倒だから(2)に頼っちゃうんでしょうが(爆)

続いて②です。

生活習慣の見直しですが。

あえて『適度な運動』については割愛させていただきます。
だって僕が今回伝えたいのは、もっと基本的なことなので。

①でも説明しましたが、水分というのが大切です。

1日の水分摂取量ですが、食事を除いた水分量を
1500mlくらいは飲んでいただきたいところです。

便秘で悩む前にね。

そもそも、これができてないから便秘になる方が多いのです。

水分少ないために便秘に

(1)の下剤を使用

水分が少ない為に効果が少ない

(2)の下剤を使用

こんな感じですよね。全然解決策になっていないじゃん(怒)

便を出すことだけが目的となって
便秘を解消することが目的じゃありません。

③です。

トイレに座ることで、座位姿勢となり
腹圧をかけやすいからってことですが。

トイレに座って排便を促すには、朝のトイレ誘導が大事です。

実は朝の目覚めのタイミングに、1日の中で一番
ビッグウェイブな腸のぜん動運動が起こるのです。

そして、しっかりと朝食を食べるなど胃の中に
何かを入れることで更に腸が動きやすくなります。

このように腸が動くのは朝起きてから1時間くらいに集中しますので。

その時間にきちんとトイレタイムを作り
トイレに座る習慣をつけることが重要です。

以上、①~③についての説明でした。

つまり!

①大腸を刺激する薬より、便を軟らかくする薬を
②水分量は1日1500ml以上(食事の水分除く)
③朝食後トイレに座り、適度なイキみで快便生活

あれ?これだけ長々と説明したのに
まとめたら三行で終わっちゃった(笑)

介護短歌

かけるべき
手間を惜しまぬ
対応を
それに加えて
懇切・丁寧

皆さん、お気づきですか?

今まで書いたことは『便ショックの対応』になっていません(爆)
むしろ普通に便秘を解消していく方法になってしまいました。
我ながらあっぱれです(笑) だって大事なことなんだもん。

まぁ便秘を解消すれば『便ショック』を
起こす可能性も軽減できるってことで(笑)

でも、それだけじゃ物足りないので。

これから『便ショックの対応』についてお話します!
(ようやく本題?にたどりつきました!)

ところで便ショックってどうして起こるかご存知ですか?

便ショックのほとんどが迷走神経反射によるものだそうです。

めいそうしんけいはんしゃとは。

恐怖や痛みなどによる強いストレスで、迷走神経が反応し、
その緊張を抑えようと血管が拡張し循環血液量が減少すること。

らしいです。

ストレス感じーの。

血管が拡張しーの。

それによって血圧低下しーの。

ってことです。

吐き気、めまい、冷や汗、
生あくび、顔面蒼白、意識消失。

これは、お年寄りに限らず、
または、排便に限ったことではなく。

たとえば注射で血を見て、くらっとしたり。
炎天下にさらされて、立ちくらみを起こしたり。
赤ちゃんが大泣きした後にひきつけを起こしたり。

もまた、迷走神経反射によって
低血圧を引き起こした状態だそうです。

便ショックを起こしてしまうと
排便だけに目を向けてしまいがちですが。

新たな対応として心がけてほしいことがあります。

それは。

『この人は排便で強いストレスを感じやすいんだな』

って思うこと。

もちろん最初にお話した①~③は『便によるストレス』の
軽減のための対応なのですが。それだけじゃなく。

便ショックを起こしやすい方は

『強い緊張やストレスを感じやすい方』

『それによって迷走神経が反射しやすい方』

っていうことを心に留めてほしいのです。

正直な話、神経反射の反応なので
どうしょもない部分もあるんでしょうが。

これをしっかり頭に入れておけば
トイレ介助の仕方も変わってきます。

ましてや相手が認知症の方だったとします。

『排便がある』という感覚が理解できずに
言いようのない切迫感を感じているかもしれません。

不快な気持ちが不安な気持ちに変わり
緊張に襲われているのかもしれません。

トイレに行きたいのに場所が分からなかったらどうでしょう。
うんこ漏れそうなのにするトコが見つからなかったらどうでしょう。

そりゃもう、パニックです。

だからこそ。

『より一層丁寧に介護をしましょう』

『相手が安心する声掛けで接していきましょう』

ってこと。

強い緊張やストレスを和らげる介護職であってほしい。

相手に安心感を与えるような穏やかで受容的な存在でいてほしい。

介護の姿勢や相手に見せる表情、言葉のトーンなど。

トイレ誘導という場面はもちろんのこと、
日々の関わりでもそういった存在を目指しましょう。

でないと、いざってときに緊張されちゃいますから(爆)

☆本日の結論

①大腸を刺激する薬より、便を軟らかくする薬を
②水分量は1日1500ml以上(食事の水分除く)
③朝食後トイレに座り、適度なイキみで快便生活
④丁寧な声掛け・対応でストレスを少なくしましょう←NEW


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