「介護の仕事って肉体労働だと思いますか?」
こういう質問をすると、おそらくほとんどの人が、
「YES!YES!YES!」
って答えるかなと思います。
でも私はあえて、
「介護の仕事は頭を使う仕事(情報戦)である」
と主張したいです。
情報を集めて整理して分析する。
これこそが介護の仕事で大事なことだと思っているのです。
①あらゆる「情報・データ」を集めて分析していくこと
利用者の状態の変化…
例えば拘縮、食事量低下、不眠、暴力、介護拒否、皮膚トラブルなど。
これらは加齢による心身の衰えからくるものもあるでしょうが、
大抵何かしらのきっかけ、理由があります。
それをどうやって見つけていくか。
カンファレンスで要点・観察点を絞り、何をどういつまでみていくか。
これです。
つまりは情報収集力、アンテナの感度がモノを言うともいえます。
普段の様子、言動、表情、食事や水分量、排泄物の状態など…
ポイントを絞って観察することが大事です。
その方向性を定めるために他職種との連携も必要なわけです。
よって、観察力や知識がないと、観察点や変化を見落とすことになります。
情報を集めるために職員自身も情報(知識)がある程度必要なわけです。
②集めた情報の分析
こうして得た情報やデータを、今度は分析していく必要があります。
例えば暴力行為のある利用者であれば、
それがいつから起こっているのか。
どんな状況で暴力が起こっているのか。
時間帯による差はあるのか。
暴力発生前の水分量はどうか。
排泄状況はどうか。
職員の対応はどうだったか。
原因と思われる病気はあるか。
等々…
得た情報をこういった観察ポイントにあてはめていきます。
で、それぞれ、
「それは何故だろう?」という所まで議論できればベストです。
「何故」水分量が少ないのか。
「何故」夜になると暴力が起こりやすいのか
などです。
これがないと形だけの観察になったり、何となくカンで対応を決めたりする可能性がでてきます。
原因がわからないからね。
人相手のため、何をどう観察するかなんてパターン化は難しいでしょう。
だからこそ先に書いた
カンファレンスで要点・観察点を絞り、何をどういつまでみていくか。
これを定める必要が出てくるのです。
③分析した情報をもとに対応を決める
先程の暴力行為のある例を出すと、
「この2週間、水分量が平均〇〇ccほど減ってる。なぜだろう?」
「施設のお茶の葉っぱ変えたから味が口に合わないのかな?」
「もしかしたら最近の暴力傾向って、水分量の低下が関係してるのかもしれない」
「お茶の葉っぱを前のものに戻してみようか」
「じゃあ、それで2週間飲み方観察しよう」
これは極端な例ですが、こんな感じで対応を決めていきます。
それで変化があれば継続、なければ再度今まで集めた情報を元に再考する。
この繰り返しとなります。
観察し記録をもとに傾向を分析→
それをもとに方向性をあらかじめ定めてアプローチをかける→
記録をもとに結果及び傾向を分析→
そこから更に手段を広げる→…
ていった感じです。
可能性のあるものをひとつひとつためしていくのです。
だから時間がかかるし職員の「引き出し」も多くないといけない。
そのためには職員個々が知識をつける必要があります。
④簡単に利用者の状態を変える方法はない
冒頭に挙げた、
拘縮、食事量低下、不眠、暴力、介護拒否、皮膚トラブルなど。
これらは
「●●したら、●●の声かけをしたら良くなった」
なんていう魔法のようなテクニックは存在しません。
日々の積み重ねです。
少しでもベターな方法を目指して手探りでやっていくしかないのです。
おわりに
「介護職は肉体労働」
確かに肉体労働かもしれませんが、
その肉体労働をするための理由や根拠がないと、
その場の雰囲気で行き当たりばったりになってしまいいずれ詰む可能性があります。
だから情報収集不足、そのために必要な知識の不足は致命的なんです。
知らないうちに不適切なことを行なってしまっている可能性がある。
「情報を制するものは介護を制す(その人にとって安心できる介護ができる)」
大げさかもしれませんが私はそう思っています。