新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

認知症対応を考える

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認知症を持つ人の対応は、ほんとうに難しいものです。

中には突然暴力や暴言が出る人、

排泄物を口にする人、

食事を食べようとしない人など、

様々なケースがあり、それが職員、また在宅では主に家族の悩み、ストレスになることも多いです。

 

そんな認知症の対応や心理状態についての私の意見を書きます。

 

 

認知症の中核症状の中に、

「記憶障害」

があるのはご存知だと思います。

 

この「記憶障害」ですが、忘れる部分が色々です。

 

例えば…

 

例① 暴力、暴言がある場合

いわゆる「すぐ手が出る人」をイメージしてみてください。

暴力、暴力を振るう理由は当人でなければわからないと思いますが、

記憶障害によって、自分がどういう状況におかれ、何をされるのがわからなくなっていると考えられます。

 

そうなると、
排泄介助→いきなりズボンを下げられる

入浴介助→いきなり裸にされる

食事介助→何だかわからないものを口に入れられる

と、捉えてしまいます。

 

更に、
「嫌だ」という気持ちを表現できず(もしくはその感情が何なのか分からず)、不快感から手がでてしまう。

 

また、何の前触れもなく手が出る場合は、

目の前の介助者が何者かわからない、もしかしたら人だという認識もないのかもしれません。

更に、これから何をされるのかもわからない。

だから防衛本能からの行動なのかもしれません。

 

イメージとしては、

自分がある日突然外国の知らない地に放り込まれた感じでしょうか。

周りの人が何を言ってるのかもわからない。

ここがどこかもわからない。

いくら介助者が笑顔で対応しようとしても、

その人にとって異世界なら目の前から介護者が笑顔で来られても構えると思います。

 

自分に当てはめてみてください。

ある日突然知らない所にいる。

周りは人間ではない者たちがウロウロしている。

更に言葉は何を言っているのかわからない。

そんな中、笑顔でこちらに来て、何かを言っている。

 

本人にとってそんな状況であれば、

構えたり、場合によっては敵だと思うかもしれないのではないでしょうか?

 

何かされるんじゃないだろうかと思ってしまうから。

 

こういったケースの場合、記憶障害の中でも、

場所

言葉の意味

目の前の相手が人間という認識

 

などが失われていると予想できます。

 

ただし、文字や絵はわかったり、身体を動かすということは覚えていたりします。

 

なので、

介助前にジェスチャーをしたり、

食事であれば食器を持ってもらう

移乗であれば手すりを握ってもらう、

入浴であれば手桶や垢すりを持ってもらう

などで、拒否なく介助に入れる場合もあります。

 

例② 食事を食べない場合

配膳しても全く手をつけず、介助しても口を開けなかったり、

いきなりお膳をひっくり返したりするという人がいるとします。

 

この場合考えられることは、

目の前にあるお膳が何なのかわからない

箸やスプーンの使い方、食器の持ち方がわからない

スプーンを持っても、それで食事をすくい、口に入れるという動作がわからない

などが予測されます。

 

なので、

ご飯の上に主菜を乗せてみる(何でもかんでも混ぜるのではないです)

食器の色を変えて中の食事を見やすくする

なるべく刻んだりミキサーにしたりせず、原形そのままの状態で提供する

(凍結含浸食など、咀嚼や嚥下状態に問題がある人でも、原形に近い形で食べられるような方法もあります)

食器を持ってもらう

などがあります。

 

参考までに私の実体験として、

隣に座り

「私も一緒に食べますね」

と、自分もご飯を食べたことがあります。

それも、カレーやパスタなどのにおいが濃いめのメニューをワザと選んで。

利用者の嗅覚にアプローチしつつ、隣で一緒に食べることで、相手も食事動作を真似しやすくしました。

 

そのうえで、

「●●さんも、ご飯が冷めないうちにどうぞ」

声をかけました。

 

その結果、食事を食べてくれた…ということがありました。

 

例③ トイレ誘導がしにくい場合

トイレに誘導するも、バーを掴んだまま離さなかったり、介助中に職員を叩いたり噛んだり、立ってくれなかったりするけど、トイレ誘導必須の人がいるとします。

 

この場合、

トイレということがわからない(事業所のトイレのつくりが自分の思っているトイレと違う)

立ち方がわからない

ズボンの下げ方がわからない

排泄の仕方がわからない

目の前の職員が何者かわからない

などが予想されます。

 

しかし、

文字や絵は理解できることもありますので、

 

トイレ動作の一連を「絵と文書」で貼る

バーに掴まり前傾姿勢をとり、

「立って下さい」

もしくは

「お尻上げてください」

と声かけをする

「おしっこをして下さい」という声かけを

「方言」で言う(新潟なら「こいて下さい」等)

あえてポータブルトイレを使う

トイレに座る動作を真似てみる

 

などの方法があります。

 

利用者によって反応は様々ですが、

私はこれらの方法を試し、

立てないと思われていた人をトイレ誘導することに成功したことがあります。

 

認知症について大事なのは、

記憶障害の中でも

動作の中でどの部分がわからない(記憶が失われている)のか

です。

 

ただ漠然と「状況理解ができない」

ではなく、

 

生活動作を細かく分けた時に、

どの部分がわからない、認識できないのかが見えてくる瞬間があります。

 

物の認識なのか、人の認識なのか、動作の仕方なのか、手順なのか。

 

その、「わからない部分」をつかんでアプローチをすると、できないと思われていたことができた…ということがあります。

 

ただし、利用者は人それぞれです。絶対というものはありません。

これらの対応が通用する人もいれば、通用しない人もいます。

 

ですが、引き出しは多い方が絶対いいです。

それだけ色々な気づきにつながり、アプローチ方法も広がります。

 

人間相手なので「ベスト」はほぼ不可能に近いですが、

少しでも「ベター」には近づけていけると思います。

 

検討→実行→評価の繰り返し。

結局はこれが一番の近道なのかもしれません。

About the author

rockkaigo

介護福祉士、介護支援専門員。業界18年の現役介護職員。 音楽、スケボー、スノボ、ラーメン、スーパーの半額タイムをこよなく愛する40歳。

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