新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

「粗茶」から広がる世界


数年前から新潟市秋葉区にある、特別養護老人ホームこうめの里にフィールドワークでおじゃましています。

そこで出会ったMさん。女中さんに身の回りの世話をしてもらうような家庭に育ったMさんは、ミッションスクールに通っていた時のことやその当時の暮らしについて、いつもお話をしてくださいます。まるで大正・昭和初期を描いた連ドラを見ているかのようにお話に引き込まれ、いつしか研究を忘れてMさんの世界にどっぷり浸かることを楽しみに通うようになっていました。

そんなMさんに年末に会いに行った時のことです。

職員さんが運んできて下さったお番茶。香ばしいお番茶。大好きです。

Mさんと並んでいただくお茶は美味しいな・・・とほっこり気分でひと口飲み、

「あ~、Mさん、お茶美味しいですね~」と私。

するとMさんは

「こんな粗茶しかお出しできないなんて」

と、とても申し訳なさそうにするのです。

お番茶は使用人や庶民の飲み物で、Mさんにとっては、お茶=お抹茶だったのです。

お茶ひとつで、その当時の風景がドラマのワンシーンのように脳内に再生されます。

「Mさん、お正月に一緒にお抹茶いただきましょうか?」とお誘いすると、Mさんはとても嬉しそうにして下さいました。

帰り際に、こうめの里の宮崎園長に、お抹茶を差し上げたいのですが・・・と相談すると二つ返事でOK。

「いいですね!やりましょう、やりましょう!」

こうして、年明けにプチお茶会が開かれました。

こうめの里には、ナント、職員さんが寄付されたお茶道具が眠っていました!
こうめの里には、ナント、職員さんが寄付されたお茶道具が眠っていました!

Mさんだけでなく、同じユニットの方も集まってこられ、さらに、ショートステイのユニットからも御一行様が!(^o^)丿

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昔お茶をちょっとやっていた、とおっしゃる方のお茶を飲む所作の美しいこと。そして、お茶の作法はわからないとつぶやきながらも、お茶碗を両手で大事そうに持ってお茶を最後の一滴まで味わって飲んでくださる方、くりかえし「うんめかった」とニコニコ顔で言って下さる方・・・。この笑顔に囲まれる幸せ。本当に贅沢な時間です。

Mさんの「番茶は粗茶」から始まったお茶会ではありましたが、お茶を飲みながら様々な話題で盛り上がったこのひととき、とても素敵な時間になりました。

Mさん(左)の笑顔は女学生時代のようにキラキラです
女学校ではお作法の時間にお茶とお花をやりました、とMさん(左)。Mさんの笑顔はキラキラ☆女学生そのものでした!

About the author

五十嵐 紀子

未来の介護福祉士が現場実習で学んだこと、教室で学んでいることのあれこれを、コミュニケーション研究者がつづります。介護の世界は驚き・感動・発見もりだくさんのワンダーランド。介護におけるコミュニケーションの難しさとおもしろさ、介護職のカッコよさを伝えます!