新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
膝関節屈曲員の短縮が滑り座りの原因になります

寝たきり老人さんの身体に起きていること ⑫ 関節拘縮の発生3:拘縮の進行


さて、しれっとw拘縮の話を続けます。とりあえず、Hoffa分類のうち例えば「関節内骨折」などは無い前提で考えてみると、寝たきり老人さん、あるいは不良姿勢のまま動けずにいると、まず起きてくるのは、「筋の伸張性の低下」です、次いで「筋の短縮」が起きてきます。この段階では「(不良姿勢が原因の)筋緊張の亢進」が直接に影響します。逆に言うと、この段階では筋緊張の亢進がほどければ、関節可動域はほぼ正常に戻ってしまう、ということです。

ところが不良姿勢・筋緊張の亢進・動けずに固まった状態が続くと、やがて、靱帯や関節包の短縮癒着の結合織性拘縮が起こり、さらに皮膚の伸張性が失われて皮膚性拘縮まで進行していってしまいます。この段階に至ると、筋緊張が緩和するだけでは関節可動域は完全には戻らなくなります。PTが関節モビリゼーションを行うと、若干は改善が得られるかもしれない、という状況ですね。

膝関節屈曲員の短縮が滑り座りの原因になります
膝関節屈曲筋の短縮がすべり座りの原因になります

さらに時間が経過して悪化すると、関節の可動性が全く失われた関節強直の状態になってしまいます。

では、そんな風に悪化していく「時間的経過」はどうか?というと、研究によると大まかには、関節固定10日程度で組織的変化が起こりはじめ、30日以内であれば回復可能も、30日以上から60日以上の固定では可動域の回復は難しい、とされています。その一方で、寝たきりになって1年から数年経っていても、臥位ポジショニングや車椅子シーティング、リフト装置を使った穏やかな移乗介助等の「優しい介助」の実践により筋緊張の低下と全身的なリラックスが得られると、正常可動域までは戻らなくても少なくとも介護上は=生活を送る上では支障の無い程度に関節可動域が回復する、ということもよく経験します。

では、すでに関節強直の状態に陥っている等、関節拘縮の改善がまったく期待できない状態では、臥位ポジショニングや車椅子シーティングなどに取り組む意義や必要は無いのでしょうか?いやいや、関節可動域は変わらずとも、筋緊張が緩和し呼吸が楽になり嚥下が容易になるなど、健康上の利点はたくさんありますから、関節可動域「だけ」にこだわってはいけません。


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