とりあえず、呼吸についての最後です。といいながら、だんだん呼吸そのものから離れていきますが。前回は、
・・苦しい不良姿勢で放置
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・・腹式呼吸の抑制
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・・呼吸の浅薄化と胸式呼吸の惹起
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・・胸鎖乳突筋の緊張継続
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・・胸鎖乳突筋の作用として頭蓋骨が顎だし姿勢に
というところまで説明しました。あと一回、続けて起こることです。
胸鎖乳突筋の緊張により、頸椎が前方に引き倒される(頸椎屈曲)+頭蓋骨が前下方に引かれる=結果として『顎だし姿勢』になっていってしまいます。すると続いて、下顎が私たちとは異なる姿、形に変形していきます。
寝たきりさんの口が開いて後ろに引っ込む理由
イラスト図をご覧ください。すでに胸鎖乳突筋が緊張して、女性が『顎だし姿勢』になっています。実は私たちの喉には、「舌骨」という骨があります。舌骨は、口を開けたり嚥下をしたり、という喉の動きを行う上で機能する骨で、いずれ「嚥下」のことを書くときに改めてまとめてみますが、今回は舌骨についている筋肉に注目します。
・イラスト図に見るように、舌骨には下顎に向かって「舌骨上筋群」、舌骨から胸骨や肩甲骨に向かって「舌骨下筋群」という細かい筋肉がたくさんついています。下顎の運動や嚥下運動にこれらの筋群が作用しますが、頭頚部が顎だし姿勢になってしまうとイラスト図に見るように、「舌骨下筋群~舌骨~舌骨上筋群~下顎」全体が『下方後方に引かれる』ということになります。下顎自体が、下方後方に引かれるんですね。寝たきり老人さんの口が空き、同時に後方に引かれてしまっているのは、これが原因と考えられます。
いったん頭頚部全体と下顎がこのような姿勢に固まってしまうと、舌根沈下も起こりやすくなります。もちろん、まともな嚥下もできず口が空きっぱなしになりますから口腔内は汚れたまま乾燥し、例えば誤嚥性肺炎やウイルス感染が起こりやすくなります。
このような、健康上にも大きな悪影響を与える寝たきり老人さんの、頭頚部全体から下顎の姿勢の崩れ=顎だし姿勢に空いて引っ込んだ顎は、実は全身姿勢の崩れと安楽な呼吸が阻害されることから始まる、と考えています。ブログ内容を目いっーーぱい先走りますが、そんな状態になっている方でも全身姿勢と呼吸状態を整えてあげると、顎が引けるようになり口がしまるってことを日々経験するもので、そう思うわけです。