新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017
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医療は介護の“後始末?!”~医学の役割と限界~


 これはまたいずれ詳しく書こうと思いますが、実は「寝たきりさん」の様子には、多くの皆さんに共通した姿があります。ここで簡単に箇条書きで書き出すと、

 ・背中はまっ平ら、上下肢は屈曲に曲がる。
・首は前に倒れている(屈曲)がその上で頭蓋骨は伸展にそっくり返っている。俗にいう「あごだし姿勢」になっている。
・口がぽかっと空いており、それだけではなく下あごが頚側奥側に引っ込んでいる。
・曲がった下肢が横に倒れ、骨盤から体幹が捻じれている。

 いかがですか?皆さんご自分でこの姿勢をとってみてください。思い浮かぶ高齢者さんの姿はありませんか?

 寝たきりの方々がこういう共通した姿になっていくのには、実は疾患や怪我は関係ありません。脳卒中等の脳神経疾患の方も大腿骨頚部骨折がきっかけで寝たきりになった方も、特段の疾患や怪我がなく歳を取ってなんとなく?寝たきりになった、という方も、全て同じような姿になっていきます。

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寝たきりの姿 “あるある”

 ですから、「疾患や怪我の“医学的な治療”で寝たきりの障害状態に陥ることを防ぐこと、あるいはいったんそういった状態に陥った方を医学的な治療で治すことはできない」という事です。

 対症治療的な対応はどうでしょう?上にあげた状況は外見的な問題(身体変形)ですから、私のような理学療法士の出番でしょうか。私自身、理学療法士として一生懸命に関節可動域訓練、関節モビリゼーションなどを行ったこともあります。確かにその場での改善は多少なりとも得られますが、改善効果は基本的に「その場その時のみ」でした。(私自身の専門職としての技術不足の可能性は否定できませんが(^^; )その場での改善は得られても、結果として拘縮の悪化を止めることはできませんでした。
他には、例えば褥瘡や肺炎/尿路感染症などの炎症性疾患にも医学的な治療は必要ですが、たとえ一旦治癒しても再発しやすい、あるいはまたすぐに別の疾患が起こる、ということは、多くの方に納得していただけると思います。

 私自身、30年少々の職業経験の中でそういうことを経験してきてつくづく思うのは、「医学治療による対応には、限界がある」ということです。もちろん、それは医学軽視という事ではありません。必要な医学的対応/治療は大切です。不適切だったり足りなかったりすると、命にかかわります。しかし同時に、万能ではない、ということ。

 ここまでのブログで繰り返し述べてきた「医学的な問題の少ない穏やかな寝たきり状態」を実現するのは、(高血圧症や糖尿病といった慢性内科系疾患に対する薬剤による管理などを除けば)医学的な治療ではありません。そもそも、特段の医学的な治療を必要とするような事態を発生させないためには、医学治療は無力です。必要であれば行いますが、それだけ、ではすぐにまた別の疾患が発生しモグラ叩きのような状況になります。これもすでに書いてきていますが、根本的に必要なのは「障害が重度でも穏やかな心身状態で過ごせるような“ケア”」です。そういう意味で要介護高齢者の世界においては、「治療的な医療は(不十分な)ケアの“後始末”」の役割を担っているんですね。制度上では逆ですね。まずは医療保険で対応して医療が終了したら介護保険対応となっています。まるで介護が医療の後始末のような位置づけです。それもおかしな話ですが、現場の実態は逆なんですね。本来は、それ(医療が不十分なケアの後始末)もおかしなことです。要は、十分なケアが展開されていれば、後始末医療はその必要性がどんどん小さくなるはずです。そして、本当の意味で必要な治療行為のみに専念できるようになるはずです。例えば十分なケアのもとでの看取りケアの場面でこそ、医療技術がより良い終末期ケアの実践のために機能する、そんなふうであればいいなぁ、と思います。(現状で全然できていない、という事ではないですよ)

 現場ではこのような問題から、もっと個人レベルで深刻な問題が生じてしまいます。いささか乱暴過激に箇条書き風に書くと、


 

・医療職は介護職よりも“上”の存在だと勘違いする。(何が上なんだろう?(^^; )
・介護施設における医療職の仕事は、医療機関における仕事よりも“レベル”が低いと見なす、自認する。(何が低いというんだろう?そりゃおいてある医療機器/検査機器は大したものはないけど(^^; )
・医療職は介護職の“上司”だと(であるべきだと)思い込む。
・介護スタッフさんが医療職にものを言わなくなる、どうせ聞いてくれないから?!(^^;
・介護スタッフさん自身が、医療職さんに比べたらしょせんウチらは専門性が低いよね~と自虐に逃げ込む。
・その一方で、医療職スタッフと介護スタッフによる、お互いのいないところでお互いに対する悪口大会が日々繰り広げられる。


 

 キリがないし自分で怖くなってきたのでこれくらいにしておきます(^^; 。それでも近年は、以前に比べたらずいぶん状況は改善してきてるかな?とも思えます。介護保険前はひどかった、と思い出します。それは、医療と介護、それぞれの役割と限界ということが整理されてきており、現場で(無意識のうちにも)浸透してきている、という事かもしれません。でも、なんとなくそうなってきた/よかった~、では不十分だと思っています。現状では、未だ「重度な寝たきりさんの穏やかな心身状態と暮らしは実現できない」と思っています。

 あー、ついでに言うと、介護施設さんが近隣の医療機関の悪口を言う(あそこに検査入院するとボロボロにされるんだよね~等)、逆に医療機関が介護施設の悪口を言う(なんでこんなになるまで放っておくかな~ここに至って頼られても困るよね~ほんとレベル低いよね~等)も、そろっと止まらないかな。そういう状況じゃ、『包括的地域ケアシステム』なんて実現のしようがない、とは思いませんか?


 

いつもニコニコ(だけ)だめだめ施設長の連絡先:VZV00734@nifty.ne.jp まで、何かあればご遠慮なくどうぞ!


 


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