久しぶりの更新、燕弥彦西蒲食支援ネットワークの高井です。
本日は水分にとろみを付ける理由のおはなしです。
水分でむせ込むひとに対して「今後は水分にはとろみを付けましょう」と言うと、誰もが嫌がります。とろみ剤による味や物性の変化は受け入れ難いものです。
誰もが歳をとれば筋力や反射は低下してきます。嚥下(飲み込み)も反射運動ですので、加齢とともに徐々に低下していきます。
例えばビールを飲むとき、「飲み込め!」と命令しなくても無意識に飲みます。これが反射です。口に入ったビールがあるポイントに差し掛かると嚥下反射が生じます。そのポイントを過ぎても嚥下反射が出なければ誤嚥します。
のどの中は「呼吸モード」と「嚥下モード」を常に繰り返しています。唾液を飲み込む一瞬、飲食物を飲み込む一瞬に「呼吸モード」から「嚥下モード」に変化します。ほとんどの時間、のどは「呼吸モード」です。飲み込んでいる時間より呼吸する時間の方が圧倒的に長いからです。
まだ「呼吸モード」の状態で飲食物が入ってくれば、飲食物は肺の入口に向かっていきます。下の画像はまさにその瞬間です。
紫色に着色した水(とろみなし)が肺の入口に向かっている誤嚥直前の画像です。
本来であれば。
・飲食物が肺に入らないように声門や喉頭蓋で気管の入口を塞ぐ
・嚥下反射ポイントはカメラより手前にあるため画像に映る前に飲み込んでいる
「呼吸モード」でパッカリと気管の入口が開いているところに、今まさに水分が入ろうとしているところです。これを回避するためには。
1.嚥下反射を速くする
2.のどに流れ込む水分の速度をコントロールする
「1」は効果が得られるまでに時間がかかったり、状態によっては難しいですが、「2」はすぐにできます。そうです。「2」こそがとろみ付けの理由です。
食べ物よりも飲み物でむせることが多い理由は飲み物の方が流入速度が速いためです。とろみ剤により、のどに流れ込む速度を調節し、バシャバシャの水分のまとまりを良くすることで誤嚥を防ぎます。