新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

多くの介護現場は働きやすくなっている。しかし働きがいはどうか?


ブログ 
【はじめに】
私が介護職員育成の仕事にかかわるようになったのは、自分自身がもともと介護現場で仕事をしていたからなんですが、恥ずかしい話、本当に仕事が長続きせず、初めて就職した特別養護老人ホームは就職して四年半でやめました。辞めた理由は「将来性が感じられなかったこと」が最も大きかったです。
介護職は以前から「3K」と言われることが多く、離職率も高いと言われてきましたが、現在どんな感じなんでしょうか。今回のブログでは、新しいデータも使いながら、介護現場の働きやすさと働きがいについて考えてみようと思います。

【介護現場は働きやすくなっている】
介護職の定着と離職については介護労働安定センターの「介護労働実態調査」というものがあります。現在、web上では令和元年度の調査結果を見ることが出来ます。
http://www.kaigo-center.or.jp/report/2020r02_chousa_01.html
どのようなことが書いてあるのか、以下は私が注目した部分です。
1.事業運営上の最大の問題点は「人材確保」
「良質な人材の確保が難しい」が56.7%で最も多く「十分な賃金が払えない」が47.5%で第2位でした。
「介護職員の研修や教育などは喫緊の課題としては捉えられていない」と書いてありました(!)。
2.「人手不足」の事業所は6割
・全体で65.3%が不足感を感じていて、ここ3年大きくは変わっていません。
・「離職率」は15.4%で緩やかな減少傾向ですが、勤続3年未満の「早期離職」が約6割と多いのが課題です。新入職員の約半数が採用時研修を受けていません。「入職3年未満への職員に対する教育や研修のありかたが課題」と書いてありました!
3.「外国人労働者に対する評価は高い」
・外国籍労働者を受け入れている事業所は昨年の2.6%から6.6%に増加。
・評価は全体に高く、「職場に活気が出た」「利用者が喜んでいた」という項目が特に多い。
4.介護現場の今後の課題は「高年齢労働者の増加」
・今後の大きな課題です。介護労働者の中で最も多いのは40歳代、ついで50歳代⇒60歳台です。
5.「職員のための相談窓口」設置の効果が高い!
・事業所に相談窓口を置くことで職員の人間関係等の悩みや不満が大きく減ることがわかりました。
・特に、法人内に「雇用管理責任者」を選任しておくことで離職率が大きく下がっていました。
6.離職理由の男女差
・男女で離職の傾向に大きな違いがあることは以前から指摘されていました(山田,2009)。
・特に男女差の大きかった項目は「自分の将来の見込みが立たない」と「結婚・妊娠・出産・育児」でした。

【先行研究と比べてみる】
これまでに介護職の離職あるいは定着に関わる要因について様々な研究が行われています。これらの研究をハーズバーグの理論を参考に「動機づけ要因」と「衛生要因」に分類してみました。


「動機づけ要因・衛生要因」とは、「仕事への満足を引き起こす要因(動機づけ要因)と、不満足を引き起こす要因(衛生要因)は、それぞれ別である」という考え方です。不満の要因になる「衛生要因」は、いくら取り除いても、満足感を引き出すことにはつながらず、仕事の満足感を引き出すためには、「動機付け要因」にアプローチしなくてはいけないそうです。
つまり、「離職を減らす」ためには、衛生要因へのアプローチも大事だけど、それだけでは介護の仕事の価値や魅力をあげていくことは出来ないということです(「働きやすさ」だけでなく、「働きがい」も上げていく必要がある)。
図を見ると、先行研究は「衛生要因」に着目したものが多く、介護労働安定センターの調査によって明らかになった事業所の取り組みもまた、「衛生要因」の改善のためのアプローチが多い。つまり、「動機づけ要因(働きがい)」に関する実践や研究がまだまだ少なく、ここを誰かがやっていくことで、介護職の魅力とかやりがいの向上につながるのではないかと考えています。

【まとめ】
近年の介護事業所は以下のいずれかに分類できる(という仮説)。
①採用時研修や職員の高年齢化などの課題があるのに改善がすすんでいない事業所
②職員のための相談窓口の設置など、「衛生要因」に関する課題への対応が出来ている事業所
③「衛生要因」だけでなく「動機づけ要因」向上に挑戦している事業所

約半数の介護事業所は「働きやすく」なっているが、「働きがい」に挑戦している事業所は、おそらくまだ少ないのではないかと思います。

下記のような記事を見ていると、もしかしたら、様々なノウハウを持っている民間事業所の方が、③に行ける、行きやすいのかも…って感じます。民間おそるべし、です。色々見習いながら、自分の仕事の参考にしていきたいです。
https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/business/mikata/column/kii/003.html?utm_source=care210519_2&fbclid=IwAR0ZgrrZSIlLslAqqb3ciUSVIXWzS4-82TtrXt2jsS3RKkbzUYzSzqf3gt0


About the author

斎藤 洋

新潟県在住|介護現場の人材育成支援|介護福祉士・社会福祉士・学士(心理学)・修士(社会福祉学)・日本社会事業大学大学院博士課程在学中| https://twitter.com/hiroshithenet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です