新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

介護人材育成における特養の施設長の役割を考える


今回ちょっと無理があるのですが(笑)「特養の施設長」と「サッカーの監督」の人材マネジメントのあり方、特に部下・チームを成長させるためのポイントについて考察してみようと思います。

1.特養の施設長とサッカーの監督の役割の類似点

1)介護・福祉事業所のトップマネジメント機能は、「利用者」の予測される数やニーズの動向、他の提供主体の動向、福祉サービスにおける法制度の変更、さらにはその他の社会環境も含めた外部経営環境を十分に把握したうえで、経営者が中心となって、組織の「経営理念」や「経営目標」を明確化し、その達成に向けて職員の意識を醸成し、 組織としてのこれから進むべき方向性と原動力を生み出す機能を意味します(http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/index.html)。
2)サッカー監督の役割は「トレーニング方法を考案するなどといった表面的なものではなく、チーム本来の目的を達成することに向けて、選手たちが全力を尽くして取り組むようにマネージすること(ヴァイスバイラー)」という定義が湯浅健二さんの本に書かれています。

そうすると、「組織(チーム)の目標を明確化し、目標達成に向けてメンバーを管理・支援すること」が施設長とサッカー監督の共通の役割であると言えそうです。

2.サッカー監督ウオッチングの面白さ
サッカーの世界には名物監督と呼ばれる人たちがたくさんいて(西部謙司さんという方が何冊も本を出しています)、読むとすごく興味深いです。
チームと個人それぞれにどのようなアプローチをしているのか、というのが監督によって違うんですが、最近では、モウリーニョ監督という方の「優秀だけどだらしない選手に対する1on1動画」が話題になりました。こういう感じの職員さん、介護でもなんか居るな…と思うし、難しい方への面談はやっぱ施設長の出番だなと思える動画です。
(参考:https://twitter.com/i/status/1305915348504387584)

3.注目度No1!アルビレックス新潟のアルベルト・プッチ・オルトネダ監督
いろんな監督、いろんなマネジメント論があるんですが、今回は、われらが新潟のサッカーチーム、アルビレックス新潟(以下「アルビ」)のアルベルト監督について書いたいと思います。
もともと息子がサッカーをやっていた関係で、私もアルビを10年ぐらい前から応援していますが、サッカーに関して本当にど素人で、わからないなりに応援してきたという感じです。
そんな私でも昨年からアルベルト監督に替わり、アルビのサッカースタイルや選手の姿勢などが明らかに・すごく変わってきたと感じています。アルベルト監督は世界中のサッカー好きの憧れのチーム、FCバルセロナにおいて、監督というよりも、若手の育成(人材育成?)に長く関わってこられた方のようです。
選手の育成に関する本も出版されていて、そこには「まず選手一人ひとりの人間性を大切にしている」ことや、「選手たちがサッカーを辞めても食べていけるようセカンドキャリア形成も重視している」ことなどが書かれています。
(参考:https://books.rakuten.co.jp/rb/11388887/)

アルベルト監督のサッカーのすごいなと思うところは、以下の通りです(完全に主観です)。
①明確なビジョン(目標)がある
アルベルトの目指すサッカースタイルは「ボールを支配するサッカー」です。バルセロナの考え方では「70%ボールを支配することができれば、80%の確率で試合に勝つことができる」そうです。
(参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/84364a1cec0476dc89c724eb41b070215ee66795)
(参考:https://note.com/hikota/n/n3d672d402704)
②目標達成のための明確な方法論(原理・原則)がある
この明確なビジョンに近づくための方法論があります。特にアルビのゴールキーパーがボールを持った時、そのスタイルがよくわかります。ボールを支配するために細かくパスを回し、つなぐサッカーをします。これを後方からやっていくと相手にパスをカットされてゴールを狙われる危険がとても高く、実際昨シーズンは何度もこれが失敗しています。それでも後ろから繋ぐサッカーを続けてきて、今シーズンはとてもうまく機能するようになってきました。
③選手の評価基準が明確である
単純に失敗を責めるのではなく、監督が描くビジョンに向けて選手がチャレンジすることを求めます。チャレンジした選手は評価され、チャレンジした結果の失敗であれば責められることはありません。ここがとてもはっきりしているので、選手は失敗を恐れずに挑戦することができます。
これ、今読んでいる「恐れのない組織」という本に書いてある「心理的安全性」にとても当てはまっています。ミスを恐れずにアルビが目指すサッカーに挑戦する。これを続けることで選手一人一人が技術的にも人間的にも成長し、今シーズン本当に強いチームになっています。
(参考:心理的安全性とサッカー:https://football.mentalabo.com/psychological-safety)
以前までは戦術への共通理解が足りないことでミスが起こりやすく、ミスがきっかけで選手同士の関係がぎくしゃくしてしまう事など本当に多かったのが、今年は、反則⇒退場になった選手を責めるどころが逆に胴上げして元気づけると言う(!)おそらくJリーグ史上初のおもしろい出来事が起こったりして、チームの雰囲気が本当に良くなっています。
監督のビジョンやパーソナリティーがチーム、スタッフ、そしてサポーターにまでいい影響を与えて、お互いを尊重しマナーを守れるコミュニティになりつつあると思います。面白いことに、このようなアルビの変化に対して審判までもが好意を持ってくれるようになりつつあり、ますます試合に勝ちやすく(?)なっています。

4.まとめ
アルベルト監督にとても興味があり、今回このテーマでブログ書いてみました。最後にあらためて「特養の施設長の役割」にもどってみると、①明確なビジョンの提示、②ビジョンに至る方法論の提示、③根拠ある評価基準の提示、④フェアプレーとお互いの尊重の重要性の説明、みたいなところができているとメンバー(介護職)のモチベーションがあがるだろうな…と考えました。理念の具現化に至る方法論や求める職員像を明確に示す、そこに向かっていない職員への個別のアプローチ、このあたりはサッカー監督の仕事ぶりはとても参考になりそうです。ただ、介護職が共感できる明確な目標設定や評価の基準、というところが、分かってはいても文章にするのが難しいところです。ここをもっと掘り下げたいなと思っています。長文読んでいただきありがとうございました。終わり


About the author

斎藤 洋

新潟県在住|介護現場の人材育成支援|介護福祉士・社会福祉士・学士(心理学)・修士(社会福祉学)・日本社会事業大学大学院博士課程在学中| https://twitter.com/hiroshithenet

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