実生活の場で活きる実践的リハビリテーション

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訪問リハビリテーションは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職が、ご利用者様・患者様のご自宅を訪問してリハビリテーション・サービスを提供するもので、略して、“訪問リハビリ”,“訪問リハ”などと呼ばれることもあります。

 

訪問看護や訪問介護のリハビリ版と言えば、わかりやすいでしょうか。リハビリテーション全体の中ではまだまだ新しい分野ですが、ここ10年位の間に、訪問リハビリを利用される方が、全国的に急速に増えてきています。

 

訪問リハビリの最大の特徴は、歩く練習、トイレに行く練習、ご飯を食べる練習等のリハビリを、ご自宅、あるいはご自宅周囲といった実際の生活の場で行うことです。病院・診療所や通所リハビリ(デイケア)、通所介護などで基礎的なリハビリを行い、ご自宅でそれらを応用した練習を行うわけです。

 

4年前に脳卒中を発症されたKさんは、6か月の入院の後、退院直後より訪問リハビリを開始されました。退院直後は、外出の際は車いすを使われていましたが、デイサービスでのリハビリと訪問リハビリを併用してリハビリを継続され、発症から4年経過した今では1kmほどの距離を休まずに歩くことができるようになりました。

 

ご自宅周囲の横断歩道を渡る練習、公園の舗装されていない坂道を歩く練習等を行い、最近では発症前に通っていた、近所の喫茶店、銀行、図書館などにも一人で歩いて行けるようになりました。

 

このように、本来、リハビリテーションとは、単に「手足の動きがよくなった」、「検査結果の数値が上がった」というだけでなく、実際の生活に結びついた、目に見える成果(”活動と参加”といいます)を目指すべきものなのです。また、Kさんは、この”活動と参加”を行うことで、結果的に、続けて歩ける距離も伸び、疲れにくい身体になりました。

 

訪問リハビリでは、この他にも、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの進行性の病気の方に対しては、その時々の身体の状態に応じた生活の工夫の指導を行いますし、要介護4、5といった一日のうちの多くの時間をベッドの上で過ごす方にも、関節が硬くならないように定期的に手足を動かしたり、必要な福祉機器、例えば、安楽に座っていられる適切な車いすを福祉機器業者さんと一緒に選んだり、介護の方法をご家族にアドバイスしたりといった様々な活動を行っています。

 

さらには、最近の新たな取り組みとして、がん末期の方が、最期までご自宅で少しでも有意義な時間をご家族と過ごせるようにお手伝いをするといった活動も行われ、“リハビリテーション“という概念自体、広がりつつあります。

 

現在、日本で理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問リハビリを提供している施設は、病院・診療所、訪問看護ステーション、介護老人保健施設の三つです。介護保険を利用されている方は、主として介護保険で、それ以外の方は医療保険で訪問リハビリをご利用していただくことになります。

 

ご利用になりたい方は、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)さん、かかりつけのお医者さん、市町村の介護保険、障害の担当窓口にお問い合わせください。ただ、訪問リハビリを行っている事業所は全国的にもまだまだ少なく、都市部と山間地を比較しても地域格差があるのが現状です。今後、訪問リハビリに携わる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、そして事業所が、県内にもっと増える必要があると考えています。

 

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理学療法士 三村健

新潟市生まれ。理学療法士、認定訪問療法士、新潟訪問リハビリネットワーク代表、

病院・介護老人保健施設での勤務を経て平成19年より現在の医療法人社団らぽーる新潟ゆきよしクリニックに勤務。

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