新潟の介護がよくわかる 総合ガイド2017

夢が叶う場所として


「夢が叶う場所として」

施設という言葉を聞くと殆どの人が、

何かある人が行く場所、と言います。

逆を言えば何もなければ行かなくても

いい場所なのです。

認知症の人が施設の初回利用の時に

何故嫌がるのか?と考えると、

本当は認知症があって日常生活に

支障をきたすようになり、施設を利用するとなったのだけど、本人は認知症があり

「自分は特に問題はない」と思うために

「何もないのに何で『施設』に行かないと

いけないのか?」という気持ちになって

嫌がるのです。

そこには本人の中に希望や夢はなく

施設という場所に行かされるんだという

心の落差を感じている事になります。

そしてそんな落差を感じているまま

お茶を出してもらい、体操をしたり

するのだけど、勝手に歩こうとすると

「どうしたのですか?どこへいくのですか?」と問われて、危ないからまず座って下さいと

言われます。食事を運んでくれて下げても

くれるのだけどその後には必ずといって

良いくらいに「歯を磨きます」

「トイレに行きましょう」と半ば強引に

連れていかれます。

行きたくないという意思表示をしても

「虫歯になると大変だから」

「何かあったら困るから」

と言いくるめられて行かされます。

一休みするとレクリエーションをしましょう!と何がしたいのか?と聞かれる事はなく、

一方通行のゲームが始まり楽しかったね、

で終わる。その後のおやつも好きなものを

食べられるわけではなく、50円のおやつ代を

支払っているのに個別袋に入っている

クッキー1枚か2枚、それと水分補給と

言われて出される飲み物。帰るまでに時間が

あるからと1か所に集められてボロボロの

歌詞カードが配られて皆で歌を唄ったり、

クイズが始まったり、カラオケだったり。

そうやって施設からご自宅へと帰っていく。

こんな1日の中に夢や希望があるのだろうか?安心安全なのかも知れないけどそれだけでは「行きたいと思う場所」にはならないと

思うのです。

施設の取り組みを改善したい!と

本気で考えていってくれる施設は少ない

ですが、それでも依頼がある施設には

その改善のために伺います。

最初は先に書いたようなスタッフ主導、

都合の施設が殆どです。しかしそこで働く

スタッフさんらに話をして、一緒に実践を

しながら振り返りをして確認し、

また考えて新しい課題を実践して、

振り返って利用者さんの変化を見ていきます。するとある程度素直に取り組みを

やってくれる施設では、まず利用者に

変化が見られます。

お茶を自らいれる姿、人にいれてあげる姿、

自分のタイミングでトイレに行ったり、

食事の準備を手伝う、食事を取りに来る、

下げる、洗い物をする、掃除をしてくれたり、昼からは自分たちで料理をしたり、

畑をしたり、社会参加活動として

近所の公園を掃除、お店の買い物かごを

拭く作業、コンビニでの清掃、

商品出し作業等、施設内で販売している

アイスクリームやジュースを買って休憩して

フロアーや洗面台等の掃除をしてくれたり

する姿。

その作業の中や帰宅前の表情を見ていると

とても表情が豊かになっていて、話せる方は

よく話してくれます。

こちらを気遣って色々と手伝ってくれる時も

にこやかで「それくらいやるよ」と。

そんな利用者の変化を目の当たりにする

スタッフたちにも変化が見られます。

「あの人が自分でお茶をいれている」

「ご飯を取りに行ってくれる」

「訓練に誘っても全く参加してくれなかった

人が畑作業には自ら参加してくれて

訓練以上の訓練になっている」

「地域に出ていけば最初は近所の方とも

会話がなかったけど最近はいつも

ご苦労様等声をかけてくれるようになった」

このようなリアルな現実が少しずつ

体感できるようになってくるのです。

ここまでくればスタッフは色々なアイデアを

楽しめるようになります。

もちろん利用者を入れての思考であり

実践です。

高齢者だから懐メロじゃなければダメ、

高齢者はやはり煮物が好き、

味付けは薄くないとダメ、

お風呂に必ず入らないと清潔が保てない等。

間違っていないこともあるけれど、

行き過ぎると人を物として扱っているように

見えるのです。

夢が叶う場所に変化させるためには

スタッフがまず丁寧なアセスメントから

その方の能力をある程度把握して信用する、やってみる事から始まります。

そして、何にも出来ない人ではなく、

一部が出来なくなっているからその部分を

お手伝いする事で「ゆっくりでも出来る事が

増える」のです。そういった実践を利用者も

スタッフも感じていくとお互いに

モチベーションが上がり、会話が増えて、

本人の気持ちに近づく事が出来て、

やりたい事、やってみたい事が見えてくる。

そして利用者の夢に近づく結果になって

いくのです。

私はよく現場の方に、

「スタッフの意識や考え方が少し変われば

利用者は必ず変わる」と話します。

利用者が自ら変わる事が出来ないから

専門職の皆さんがご本人の出来ない事を

あらゆる角度から支援する事で自らの意思が

反映されるという事。

施設という場所が

お互いの想いと夢と希望が叶う場所で

あってほしいと思います。

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