「ちょっと、ちょっと、誰かいないの?」
静かなフロアーに響く呼び声。
ある利用者さん、席に座り1人になり
そばを誰かが通ったり、
近くで声が聞こえたら、「こっちにきて!」
と何度も言われる。
「○○さん、おはようございます」
と挨拶して横にいくと、いつも必ず、
「そばにいてくれる?」
と頼まれる。
「はい!ちゃんとそばにいますよ」
軽く手を握りながら話していると、
よく手を軽く叩くのがいつもの事。
私はこの方なりの挨拶なんだろうなと
パンパン叩かれてる自分の手を見ながら
考えていたら、
「もういいわ!あっち行って」
と、叩いていた手をプイッと返される。
「はい。じゃあまた来ますね」
と、その場を離れて、少しスタッフに
話ししていたら、
「ちょっと!こっちにきて」
と呼ばれる。
こんな感じを繰り返している。
この方はその後、かかわりを続けて、
少し考えて話ししたら色々と変わって
いったのですが、
理解出来てないスタッフはやはり
利用者さんに対してこんな言い方を。
「そんなに何回も言わなくてもわかってます。
他の方も観ないといけないから順番よ、順番」
「○○さんばかり構っていられないんだから
少しくらいがまんがまん」
これまでの地道な取り組みは、
こんなところから理解ないスタッフが
崩壊させていくのです。
キチンと少し時間をとり、考えてかかわるだけで
利用者さんはそれに合わせて変わろうとしてくれます。
一生懸命に慣れない身体で考えて。
そうしてちょっとずつ築けたかも
知れない利用者さんとの関係性もまた
スタッフの心ない言葉により1からやり直し。
考えてほしいのです。
なぜ、そばにきてほしいのか?
その方のその時の気持ちを考えようと
ほんの少しだけ、その言葉の背景を
考えてあげて下さい。
住み慣れた自宅から知らない場所に連れて
来られ、いきなり施設から言われるんです。
「今日からここが○○さんの部屋ですよ」
突然言われて受け入れなんてなかなか
出来ないでしょう。まして症状を抱えて
いるのですから。
理解が出来ずに不安で聞くことも出来ない
その方に私達は何が出来るのか?
そんな不安感を理解して、
さりげなく話を聞きながら、
「そばにいる」
そんな短い一瞬くらいはどんな
現場でも出来るだろう。
そばにいる事はただ単に寄り添うというものではなく、
その言葉の中にある利用者さんの「今」の
気持ちを考えていく事から始まるのだと。
そんな心境の中で懸命に暮らしている
利用者さんに少しでも「心の安心」を
感じてもらえるスタッフでありたいと
思います。
放浪後の一言:不安だから助けてほしいんだよね、きっと