介護の仕事は、相手のためにポジティブな何かをすることです。思いやりだったり、フォローだったり、予防だったり。
これって相手のことを考えるとか、配慮するとか、とにかく自分のことよりも相手を優先することなので、まずは自分がしっかりしていないといけないのです。
介護は感情労働である、と言われているように、あんぱんマンと同じく、自分の感情を削りながら、相手に手を差し伸べていくので、『感情』というのは消耗していくのです。
消耗した感情を補うには、自分自身も誰かに癒されたり、感謝されたりする必要があります。
だから多くの介護職が言う『ありがとうがやりがい』というのは、消耗した感情の補給をしているのです。
実はこのやり取り、僕は非常に危険だと感じています。
なぜなら、利用者(お客様)はいづれ寝たきりとなり、感謝できなくなるからです。
介護職員も、意識的に感謝を求めているわけではありませんが、反応がなくなった人に対していつまでも心を削ってやさしくできるわけではありません。
よく、介護と保育は似ている、とも言われていますが、確かに行為は似ていますが、確実に違うのは、子供は成長する、ということです。
暴れられたり、言うことを聞かない子供も、日々成長します。
それがポジティブな反応として、先生へのエネルギーとなるのです。
認知症ケアでも同様に暴れられたり、言葉が入らないケースがありますが、高齢者は日々低下していきますからね。
どんなにがんばっても、高齢者です。
確実に降りていく人たちです。子どものような成長はありません。
だから、介護職員は、観察力を高め、日々の何気ない変化に気づき、その小さな回復や向上をエネルギーに変えることで、やりがいが見いだせるようになるのですが、そこまで興味のない介護職員にとっては、やっぱり心を削っていくだけの作業となるのです。
感情を使い果たした介護職員は、
- 無表情になります
- セリフが棒読みになります
- ちょっとしたことでは喜びません
- 無関心になります
- 目を合わせません
- あきらめがちになります
- やさしさがなくなります
- 腱鞘炎になります(力の入れ方が悪くなるから)
彼らも、もともとは介護に希望を持っていたのですが、日々感情を削られ、むなしくなり、自己防衛のために感情を出さなくなります。
いわゆるバーンアウト状態です。
これを防止する方法があります。
特に部下を持つ人たちにしかできません。
利用者(お客様)から感謝をもらうことをやりがいにするのではなく、上司からの承認をやりがいとすることです。
上司からもらったエネルギーを、利用者(お客様)対応の力にするのです。
これは無限です。
上司が承認し続けることが条件ですけど。
組織で仕事をしているのですから、現場のスタッフを守るのが上司の仕事です。
現場の職員に、『利用者(お客様)のため』というならば、管理者、リーダーは『職員のため』ですよ。うっしっし
もうひとつは、現場の介護職員自身が『根拠を学ぶこと』です。やはり医療的な知識、リハビリテーションマインドをもつことです。
職場のわけわからん雰囲気に流されて、あきらめるのではなく、プロとしての仕事に徹することです。
それも『思いやり』とか『やさしさ』ではなく、『根拠をもって正しいと思われることをする』ことです。
でも、学ぶとか、やる気を出す、というのは、やっぱり組織の雰囲気に左右されますので、やっぱり、まずは、上司が部下を褒めること、認めることから、でしょうね。
やる気がなくなるのは本人のせいではなく、環境のせいですからね。うっしっし
知野吉和